ありがとうね。
ヒヤシンス

煤けた屋根裏部屋でまだ見ぬ宝物を探すような胸の高鳴りを感じる。
僕はトム・ソーヤであり、私は赤毛のアンであった。
一方に父方の威厳を、また一方に母方の愛情を持つ感覚。
目に見えないものを見、聴こえないものを聴く感覚であった。

ありがとう。この言葉を言いたくて今を生きている。
ありがとう。この言葉を聞きたくて私は私の旅路をゆく。

きみは自分を許すことが出来たかい。
尊くて慈悲深い存在が、自分の内にいることを知ることが出来たかい。
生を疑い、死を隣人に持つきみはまともだよ。
死の誘惑は甘く、苦い生を包み込むには十分過ぎるくらいだからね。

 
でもね、死ねないよ。死にたがりに死を授けるほど神様は優しくないんだ。
だからね、死ねないよ。きみが消えることによって生まれる悲しさの方が優先なんだ。

 
僕はと言えば、そうだなぁ、今はトム・ソーヤな気分だよ。
生を生きる意味がほんの少しだけわかったんだ。
死にたがりは卒業さ。
僕が消えるなんて考えられないよ。

儚い人生よりも美しい人生を送るんだ。この世は精神の美に溢れている。
水晶に変わった涙は古い宝石箱に入れて屋根裏部屋にでも置いておくよ。

ありがとう。僕の感覚。きみはまだ濁っちゃいない。
ありがとう。僕は僕とみんなの感性を信じることに決めたんだ。

 
ありがとうね。


自由詩 ありがとうね。 Copyright ヒヤシンス 2013-09-25 23:55:37
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