家族旅行
ただのみきや

最前列に磔刑宛ら固定され
急な坂をゆっくりと上って行く
頂上に何が待ち受けているかは分っている
(何故こんな日に雨が降るのか) から
(何故雨の日にこんなことをするのか)
思いを行き来する疑問の変遷
やがて高原のさらに突端のような高みから
親子は急傾斜を下って行く


 初めて遊園地へ連れて行った日も雨だった
 歩いているとウルトラマンとばったり会って
 一緒にコーヒーカップに乗ったのだ
 後からショウに行ってみると
 広い会場に客は私たち親子だけ
 妙なプレッシャーが双方を支配していた
 バルタン星人が息子を捕まえて
 ウルトラマンがそれを救い出す
 最後にウルトラ兄弟たちと記念撮影をした
 あの頃幼稚園だった息子も今は中学生
 私よりも背が高く靴のサイズも大きい


ジェットコースターには疑問を感じる
乗るごとに内臓年令は上がり寿命が縮んで行く
だが今は息子と一緒に乗りたいのだ
息子が乗りたいものに付き合いたい
そのためにやって来たのだ
目の前にループが迫ってくる
あってはならないことだ
しかし途中下車は出来ない泣いても叫んでも
止まるべきところへ至るまでは


息子を愛していた
それが伝わっているものと思い込んでいた
だが私は癇癪持ちの理想主義者だった
彼はストレスの頂上へと運ばれて行った
無言のままカタカタと日常生活を軋ませながら
そんな態度をいさめながらも気付かぬままに
私はその日を迎えてしまったのだ
炎は燃え上り家族は怒涛の如く下って行った

 
 ループして/叫んで/泣いて/止まらない/
 揺れて/カーブして/黙して/降りられない
 アップして/すがって/ダウンして/震えて
 /アップして/弁済し/重力に逆らい/塞ぎ/
 愛して/苦しんで/減速/減速して/放心して


愛されていないと言った息子に
愛していると伝えたかった
しばらく離れて暮らした後で
家に戻れたら何をしたいか尋ねたら
友達のことゲームのこと
そして家族で旅行へ行きたいと言われた時
ただ嬉しくて涙が出た


リゾート地でたった一泊二日
まさかの雨に濡れながら絶叫マシンに乗り続ける
これ以上Gには耐え切れず息子を?死霊の館?へ誘う
妻は嫌がったが彼は乗り気だ
ちっとも怖くはないけれど
友達同士のように燥ぐのにはちょうど良い





自由詩 家族旅行 Copyright ただのみきや 2013-09-20 23:15:19
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