天と地が出会う場所
まーつん

 空は
 白紙に似ている

 私たちの
 頭上に開かれた
 広大な空間

 人は そこに
 想い想いの
 絵を描く

 でも 私は
 そこに描き得る
 どんな夢も
 持ち合わせていない

 美しい理想も
 邪な野望もない

 光から
 顔をそむけて

 暗闇の中の
 植物のように
 唯 息をしているだけ

 だから ある時
 私は マッチを擦って
 空に火を放った

 青空は
 希望を描く
 魔法の紙

 それが
 炎を吹き上げ
 煙を吐きながら
 火の雨となって
 地上に降り注いだ

 そして今、夜は
 天も地も 闇に沈めて
 明けることがない…


 (2)


 空は
 鏡に似ている

 人は
 そこに映した望みを
 地上に現わそうとしてきた

 家を建て
 土を耕し
 そこに生きた


 空は
 理想を映す
 姿見の鏡


 人は
 鏡の中の
 自分に合わせて
 華麗に踊ろうとしては
 足をもつらせ 転び続けてきた

 頭上の空と
 足元の大地とを
 同時に見ることはできない

 夢と 現実を
 同時に生きることが
 できないように

 だから私は
 足元の石を拾い上げ
 空に投げつけようとした

 己の理想を映す鏡
 それを 粉々にし
 降り注ぐ 鋭い破片に
 醜いわが身を わが心を
 切り刻ませたかった

 だが 何かが
 この手を
 躊躇わせた

 私は深く息をし
 それから
 周りを見回した

 辺りには
 荒野が

 そして
 彼方には
 地平線があった

 その一本の線は
 あやふやな 軌跡を辿りながら
 空と大地とを 繋ぎ留めてくれていた

 水と油の敵同士
 彼らの腕を そっと支えて
 握手させる 辛抱強い
 仲裁者の様に


 天と地が
 出会う場所


 そこは いつだって
 遠く 遠く 歩を重ねた
 遥かな時間の先にある

 私が いつも
 誰かとの仲直りを
 先延ばしにするように 

 だが 本当に
 戦うべき相手は
 己の内にこそあるのだ

 せめぎあう
 不安と 希望と

 時に私は 希望に組し
 不安を 打ち倒したいと願う

 時に私は 不安に額ずき
 希望を 嘲笑いたいと願う

 だが その二つは
 実のところ 血を分けた
 兄弟のようなものだ 

 私の心 という
 生みの親の血を

 だからこそ
 彼等は 互いの存在を
 許しあうべきだが

 カインと アベルのように
 空と 大地のように

 遥かな未来に
 於いてしか

 永き道のりの
 果てにしか

 和解することは
 無いのだろう

 だから私は

 焼ける石と化した 葛藤を
 胸の内に 抱えながら 
 今日も 歩き続けるしかない



 あの地平線に向かって











自由詩 天と地が出会う場所 Copyright まーつん 2013-09-19 21:47:16
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