わたしは詩をつくれない
左屋百色

あの日、
そうです。あの日からわたしは詩をつ
くれなくなった。何も浮かばないので
闇が静かに明けてゆくのを待っていま
す。ほら、ありふれているだろ。君の
言葉は素晴らしい。必ず朝を呼びすべ
てを照らす。ほら、普通だろ。水色の
傘ひろげ悩んだふりをしている。ほら
、もう何も感じないだろ。今日もこの
町は君がくれた現代詩が燃えているか
らきれいなんだよ。わたし何度でもよ
み返すから。花を踏んで瓦礫も踏んで
背伸びして遠くの町を眺めたけれど君
の姿は本当にもう見えなかった。

あの日、
どんな青よりも
君のこころは圧倒的に青かった
この世の果てまで並んだ比喩を
右から順に潰していった
君は正しかった
今、
散文を両手にかかえ歩く道は
瓦礫ひとつない
比喩なんてどこをさがしても
全くない
わたしはまだ詩をつくれない
これがこの町の素顔なのか
現実を叩きつけても
この町のコンクリートには
ヒビひとつ入らない
はね返りわたしの青に突き刺さるだけ
それでも
君と交わした言葉のどれかひとつが
風に乗り
どこかの町で
いつか現代詩になれば
それでいい


自由詩 わたしは詩をつくれない Copyright 左屋百色 2013-09-19 15:00:53
notebook Home