帰宅
草野春心



  家に帰って
  ギターの弦を布でふく
  なにか歌いたいような気はするけれど
  なにも心にうかんでこない



  なぁ、訳知り顔で、
  知ったようなことをほざくような馬鹿にも
  気の利いた冗談を気の利いたときに
  さりげなく言えるような気障にも
  なりたくはないんだよ、僕は
  


  ギターを膝のうえに載せ
  弦に指を添えじっとしている
  歌いたいわけじゃないんだよ僕は、ただこうして
  なにかを待っていたい
  待っていればなにかがやってくると
  訳もなく信じていたいんだ





自由詩 帰宅 Copyright 草野春心 2013-09-17 20:48:06
notebook Home