秋の夜長に
アマメ庵

大人になったのわたしは 眠たい時に寝る
あるいは 眠たい時にも寝ることを許されない

子どものころは違った
短い針が9のところに来ると 布団に追いやられた
否応なく灯りが消された
二段ベッドの下の弟と喋っていると 叱られた
やがて弟が眠り ひとり夜に残される
カーテンから洩れる外灯の紋様を 瞳だけで追いかける
時計のチキ、チキ、チキ、を数えてみる
コオロギが窓から近くにいるぞ
近くの犬と 遠くの犬が鳴き声を競っている
いつしか眠ってしまう
母が朝食を拵える音が階下から聞こえると あたりはすっかり明るくなっているのだ

時計の針の音を聞くのは久しぶりだ
毎日そばで鳴っているはずなのに
大通りをバイクが走り抜けて行く
誰も朝食を拵えてくれない部屋で 眠ってしまう


自由詩 秋の夜長に Copyright アマメ庵 2013-09-16 20:55:20
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