一滴の死
ホロウ・シカエルボク

したたかに濡れたひな菊のとなりで
腐り果てた一羽の雀
受け止める土は泥のようで
月の光も届かない
空家と廃屋に挟まれた僅かな路地のことだった
塗り潰されたような目
塗り潰された…視ることをもう必要としないからだった
少し離れたところから見ると
それはなにかプラスティック製品の破片のようだった
すでに臭いはなく
ただ夜が重圧していた
鈴虫が鳴いていた、「安らかに」なのか、「起きろ」なのか、「馬鹿め」なのか
それはどれだけ耳を澄ませてみても釈然としなかった
雨粒のような一滴の死だった
そして
雨粒ほどには
関心を寄せられることも無かった
夜の音が
深く


空に積もっているところだった


自由詩 一滴の死 Copyright ホロウ・シカエルボク 2013-09-15 00:15:22
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