八月の残照 (十五首)
もっぷ
青空と呼ぶのはたやすいことだけど本当にこれは青なのですか
週一度通ってくれる看護師さんわたしに触れる唯一のひと
晴れるかな空をみるため扉開け一歩だけ出て知った八月
詩と書いて思う言葉は本当はときには死、だったりします
会えない夜それはいつものことでしたこの八月も/ふり返り思う
熔けてゆくように鳴いてる蝉たちのいのちの残照この夏終わる
金魚すくい一度はやってみたかったもう間に合わないきみも浴衣も
きらきらとまばゆいなかに居られたらあなたに水を撒いてほしかった
東京はいよいよ九月を待っています書いてデリートかえらぬひとへ
部屋のどこを捜しても明日なんてないつぶやいてたらメール着信音
秋を待ち碧の海にいきましょうすぐに壊れるお城作りましょう
ひざ抱え詮無い思いかみしめてライターの灯に消えた八月
ワード開け角砂糖一つ噛んでみるコクトーの真似してみるゆうべ
ねえ知りたい、わたしが翼ほしいわけ、一度かかとを忘れたいから
ロンドンのパブの昼間の優しさにすがった夏もいまはまぼろし