恋人
草野春心



  恋人とよんでもいいだろうか
  きみのことを
  この夏がおわるころには



  はげしい雨がふる夜は
  ビニール傘を用意するから
  おなかが空いたらカップヌードル、
  喉がかわいたらつめたいビール、
  お金が無いなら実印も
  見えるところに置いておくから
  恋人とよんでもいいだろうか



  寒い日はこたつで隣り合って
  みかんを剥いてあげる
  髪をきったら気づいてあげる
  つらいことがあったら聞いてあげる
  なにも解決はできないけれど
  ただ
  何となく、
  そばにいてもいいだろうか
  大学時代の話をしてもいいか
  昔好きだった女の子の話や
  ジャンプの最新号の話や
  村上春樹にはまっていた話、
  スコット・ウォーカーの話をしてもいいか
  ふざけあったりすれちがったりうらぎったりごまかしたり
  してもいいだろうか



  おちのない話みたいな
  優しさぐらいはあげられるから
  こたえてはくれないだろうか?
  この夏がおわるころには




自由詩 恋人 Copyright 草野春心 2013-09-13 17:45:39
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