日記「七月」2 (二十首)
もっぷ
遠くなる空の頃にはもういない夏のひかりは恋のトリガー
八月にあと十日ある暦みて七月の長さ蝉と比べる
みあげるといつものままの夏の空きのう見たのが二年前でも
東京じゃない場所へ帰るひとびとのための土産屋やってみようか
聞かないしたずねることもやめてみた君の心のセピア色には
どうしたら除夜の鐘まで届くかな道描けないほどの夏の日
百日紅夏のメタファー何日目気になりだした未だ七月
遠距離の二人同人ケータイの毎夜の合評いつか転じて
約束という反故にするためのことまた繰り返すヒトはなにゆえ
遠い日に足し算をしてきょうになり引き算をしてきのうにならない
きみの名は戒名でなくきみの名はあらためられず未だ父さん
空の涯てどこまで行ったあの白い煙の立っていまはどこまで
白煙は冬の日のものきみと猫のこされてみて七月のわたし
無理と知りたぶん言ったか殺してときみの痛がる姿消してと
この町に個という単位のふさわしい三畳ばかりの工場連なる
バス通り雨に濡れても街灯に晴れればある意味そよぐぴらぴら
ゆく前に立ち返るよう促されそうかと思い締める靴ひも
きょうもまた不忍池の見ていない蓮花だけど写真で視てる
日記帳開いて書かない出来事と熱心に書く心象風景
公園の花は遠い日ハナミズキいま陽に透けて落ちる思い出