大人のための桜田公園
乾 加津也

校庭跡に残った桜の木
ビルに挟まれてわかりにくいが
駅の改札口を出てほどなくのところに
ふと足が向いてしまう
今はないという
桜田小学校
晴れの日の緑はすがすがしく
ベンチで
ブランコで
ブロック囲いの上で
揺れる木陰で

ビジネスマンが
ОLが
異国の人が
オタク似の男が
チラシ配りの女が
ステッキ、ステッキ
お洒落なシャッポの年配の紳士が

友と
同僚と
(もちろん、ひとりで)

座って
食べて
大声で
スマートフォンに身振り手振りで
笑って
広げて読んで
見上げて
(雲)
俯いて
(土)
うたた寝て



舌ハァハァの犬も立ち寄る
(むかし銘銘、校舎で遊んだ記憶を軋ませて)
ない交ぜの



自由詩 大人のための桜田公園 Copyright 乾 加津也 2013-09-12 17:35:09
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