アジェリッド(湧き水)
草野大悟2

地獄門の陰のこわれた海のかなたに入学式は立っている。
蝶たちはずいぶん長い間待たされ、いっそのこと青虫に戻ろうか、とキャベツを背負って思っている。
鳥山が立つ海の深層には大きな迷いが泳いでいる。

あの日あなたは死に、産まれた。
七回忌には多くの友だちが七歳の誕生日を祝おうと集まった。
あなたは厳かに言った。
「私は死んだとき産まれているの」

あなたの言葉は
魚になって泳いでいった
魚たちが驚いておしゃべりをはじめ、
歩きだした干潟が、たしかに乳幼児の顔をして永遠になった。

街では
水曜日のネコが
三日の過去と三日の未来を従えて
アンニュイを転がしながらモヒートを舐めていた

今日という日は過去と未来がぶつかって激しく渦巻くネコの墓場かもしれない。
今日 わたしたちは 空ろな骨を 食べた。

                    ぷくっ
                   。
                ○。
            。○。
        ○。○。
    ○。
かすかな音がわたしたちの奥の奥のずっと深いところから
ゆらゆらゆらゆら昇ってきた。

              ぷくっ
          ぷくっ
 ○   。  ○。
  ○。
○。   ○。
         

わたしたちはそれを体に含みたくさんの幼い子供を宿した。                 


自由詩 アジェリッド(湧き水) Copyright 草野大悟2 2013-09-11 23:12:49
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