電話
たもつ

 
 
アパートに似た生き物が
背中を掻いている
古い窓を開ければ子供の声が聞こえ
秋の風も入るようになった

父が死に
母が死に
君は僕と同じ籍にいたくないと言った
もう昔みたいに
僕のことを愛してくれる人はいない

明方、よく冷えた台所で
電話が鳴ってる
誰も出なくてよいから
多分、ずっと鳴ってる
 
 


自由詩 電話 Copyright たもつ 2013-09-09 21:56:48
notebook Home