間合に入る言葉
朝焼彩茜色



水面しか思い出せない 悔いはない

 溢れんばかりに憚る言葉が間合に入ってくる いつでもどこでも
 拾おうと跪くと脆く「N」の単位でなんか話にならない 早くに去ってしまう

 いづれ戻って来ても 嵩を増し 素敵な迂回に世界を黙らせる程
 膨らむ 

 いったいどんな生き物なんだい 言葉とは

水面しか思い出せない 航海の根は深海にある

 角度を筋肉つけした腕で潜る 深海へと 息継ぎなんてよぎる余裕はない
 人魚と見つめ合っても 余裕で驚きを懐に隠し 笑って見せる

 強かに愉しむ潜り 流線型を真似て 肺呼吸を忘れ
 泡を吐いて泡を吐いて 美しい曲線を描く仲間と喋りながら 潜り泳ぐ

 
水面しか思い出せない メモを取らせるものかと 忘れる脳を好んでいる 言葉

 間合に入ってくる程 刻印されたと誤作動を起こす 私の海
 もう既に忘れている 愛したかったのに 浮かんでは潜り浮かんでは潜り

 再び姿を現す時は 磨ぎ澄まされていて 海に潜ってゆく夕陽のように 美しく
 見惚れているばかるで 感じることしか出来ない

 それでも 間合に入ってくる 原石の言葉 いつかいつか 私が磨きたい

 溢れてしかたない いつでもどこでも 真に言葉が生きの道

 跪き両腕で抱きたい 脆く儚い言葉も全て


自由詩 間合に入る言葉 Copyright 朝焼彩茜色 2013-09-09 16:13:04
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