秋の音 (詩人サークル「群青」9月のお題「音」から)
Lucy
屋根を叩く雨がやみ
木の葉の触れ合う音に換わる
近くで車のドアが閉まり
ガレージのシャッターが
じわじわと上がる
子どもたちが
何か言い合いながら通る
窓があいているので
はっきりと聞き取れる
「こどもだけで、そんなところに行ったら
だめだとおもう」
「でも・・だいじょうぶじゃない?」
「一回しんくんとなおちゃんとで行ったことあるんだよ」
「おかあさんにきいてからじゃないと」
「だけどすぐもどってくるんだよ」
「そうだよだいじょうぶだよ」
「すごくおもしろいんだよ」
「行きたいよね。みんな行ってるんだよ」
「でもやっぱり、子どもだけではだめだと思う。」
危ない会話
郵便屋さんのバイクが通る
遠くをよぎる列車の音
日が落ちて
リー、リー、リー と
かすかな虫の音が
驚くほど鮮明に耳に届く
しだいに裏返る記憶のはずれに
消え入りそうな音として
あの時私はどうして行かなかったんだろう
みんなと一緒に
仲間の説得には失敗し
結果一人だけ無事だった
まるで裏切り者のように
「そんなにいつも、いい子でいたいの?」
今も内耳に突き刺さったままの
あの子の声
りー、りー、りー・・