誘惑
そらの珊瑚

雨の匂いが
潜んでいる

濡れた靴下の爪先に
よれたハンカチの糸に
ほつれさせたじーぱんの穴に
更紗の青い染料に
ぱあまねんとがとれかかったおくれ毛に
やすりをかけたかかとに
ポケットの期切れのチケットに
ありとあらゆる
紙屑に
紙屑だと名付けてしまった付属品へ
降り注いだ
私の雨が
半乾きになりつつ
それは
ひどく艶めかしく冷えた手が
触れるか触れないかの距離感を保ちながら
甲でさらっていくように
水の粉が
伝播していく



自由詩 誘惑 Copyright そらの珊瑚 2013-09-04 15:33:32
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