近視の夜歩き
凍湖(とおこ)

眼鏡をはずし
目の前を水中に沈めれば
外灯は滲み
ひとびとは陽炎になって
せかいはちいさくちかく、まるくなると
おもっていたけど
無限のひろがり

おとこもおんなもなく
泳ぐような身体の軸が
あられもなく浮かび上がり
虫の声、コンビニの店内放送、電車の音が
ちかくもとおくも重なりあい
伸び縮みをする。

眼鏡をはずせば
さまざま景色が
煮込んだシチューの具のように
細かいかたちはわからねど
それぞれ、角を立てるでなく
完全に混じるでなく
ぷつぷつ
ぷつぷつと
隣りあっている。

近視のよるは
おおまかの流れにのって
以前よりはっきりと、意識する
お隣さんの存在、お隣さんへのひろがりを。



自由詩 近視の夜歩き Copyright 凍湖(とおこ) 2013-09-03 03:43:23
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