地球の顔を踏む
殿岡秀秋

頂上から
山の斜面にある
噴火口のくぼみまで
火山岩の砂利を踏んでくだる
植物のない荒涼たる大地

坂の途中で
凹んでいるところは
地球のえくぼだ
そこからあがったところは瞑った目
急にひらけた視界の下に
砂を吐きだした跡の口が開く
わしはいつかまた火を噴くぞ

灰色の火山灰のつもった
斜面をくだる
いつか最後の川を渡るときに
こんな地形を歩かされるのだろう

登ってくる人たちとすれちがうときに
頂上には雪が残っていると伝える

いつかわしの処へ戻ってくる
と背後でうそぶく声を
砂利が入った靴の中の
足の裏で感じる

そのときはからだが
軽くなったばかりだから
息は苦しくないはずだ
松明の火のように
地上から浮いて静かに川へ
下っていくのだろう

おれは歩みをとめない
登り下りの連続は
物心ついたときから続いている
一歩が三年だったり
一歩が三日だったりするが
やがてあと一歩で終わりの日がくる
それまでは

山の影が
森や遙か彼方の街までおおう
おれは風景に靴跡を印す
その連続をこそ






自由詩 地球の顔を踏む Copyright 殿岡秀秋 2013-09-01 19:03:53
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