カモメのことばを知らない
かんな
徒歩五分で海
という環境で育ったわたしは
ただ鈍感だった
ひどく夕陽が眩しく
一日の終わりを告げる焼けた空が
ひりひりした匂いを連れてくる
そんなものだと思っていた
その空もあの雲もしたたる雨もなびく風もすべてが
海に繋がっているということ
きみとの出会いが
教えてくれたような気がした
空気を嗅ぎ
雨がくるよとわたしに語りかける
指を差し
あの波の白いとこに魚の群れがあるという
きみは海に語りかけ返事をする
釣りをして食物を得ては感謝する
顔をあげる
きみの海はとても広い
飛び込んでみなければわからないことが
きっと多いのだ
カモメにさよならをいう
帰路を歩き出すきみの手を取って
ちいさくキスをした