君の好きな歌を
栗山透

傷だらけの赤い液体を
大事そうに抱えてる君と
言葉ではなにも伝えられないぼくが
ぐらり 抱きあって よろけている
仲のいい酔っ払いみたいに
ふたりしてよろけている

酔えるのならば実は簡単だ
ぼくらはお酒にとてもとても強い

美しくも巨大な魂は
君の小さく華奢な体では
おそらく収まりきらない
口から 毛穴から 涙腺から
魂は今にも飛び出さんとしている

「心がぎゅっと苦しくなったら
思い切り歌うといい」

「魂を解放する方法は
歌うことか 喋ることだけなんだ」

「だから思い切り歌うといい」

「下手でもいいから」

「いつもの帰り道で 君の好きな歌を


自由詩 君の好きな歌を Copyright 栗山透 2013-08-31 12:46:08
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