夏秋
マチネ

私の歩いてきた
この道の
この蒸し暑い大気の中に
いまだ蝉達がさざめいているのに
この道に立つ私の
かぼそい足の突端の
この黒いスニーカーには
もう蜻蛉が止まりはじめる

蜻蛉は
光を受けて虹を映した
半透明の羽根をふるわせ
「こちらへおいで」
と私を誘う

 (そのはかない光彩は
  しばし
  私の脳を麻痺させ
  なまめかしい気分にさせる)

私は蜻蛉と行こうと決める

それだのに

私が足を動かすと
全く静かだった蜻蛉は飛び立ち
瞬時に夏の空へ消えていくのだ

取り残されたこの道で
いまださざめく蝉の声を
放心の私が立ちすくんで聞いている


自由詩 夏秋 Copyright マチネ 2013-08-30 15:51:41
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