フラミンゴ平線
瓜田タカヤ

どうしても子供に本物の象を見せたかった。
それで仙台の動物園まで家族4人車で向かった。

午前9時に起き、チェックアウトの準備をした。
車を取りに外に出、空を仰ぎ見るとそれはどう見ても
クラウディハート並の灰色であり、午後から雨が降ると
天気予報でも確実に伝えられていた。

子供たちを起こし、昨日真夜中彷徨った山道へ再び行き動物園に着いた。
すぐ向かいはベニーランドという遊園地になっていて
時間があればそこにも行きたいねと子供と話した。

小雨が振っていることを俺の内部では
知らない振りしてごまかしながら
動物園へ入り、アシカとかを見、色々彷徨いて
そしてついに本物の象を見せることが出来た。

しかし象はまるで何かの患者のように
いつまでも、同じ行動をとり続けていた。
少したじろいだが、オレ的には
「本物の象を見せる。」というお題目は満たしていたので
まあまあ満足した。

そして
「ここには動物何でもいるんだぜ!
 カイリ(子供の名前)次に何を見たい?」と生き生きと聞いた。
しかし子供は少し考えて
「ウサギが見たい」と言ったのでガクッとした。

ウサギなら青森でも見られるよと思ったけれど、
ちゃんと糞まみれのケージ内に、ウサギもいたので満足していた。
その後ライオンを見た頃には、雨も大分「小雨」という名前を
つけられないくらいの振り様になってきた。

それでも何とか傘をさして、動物らを観賞。
小さなため池に固まっているフラミンゴやサイを見たりした。
俺がまたしても、次に何を見たい?と聞くと
「亀が見たい」と子供。

再びガクッとするも
ちゃんと亀もいたので満足していた。
・・ウサギとカメって事か・・。

サル山のサル達を見る頃には、完全な雨振り状態であった。
動物園を出て車に戻り、
遊園地のベニーランド内部を入り口から覗いてみるが、
入場すれば俺達家族の貸切であっただろう。

受付のお姉さんに、ジェットコースターも運行しているの?ッて聞いたら
彼女は「雨に打たれながらでよろしければ」と言った。

その挑戦的なセリフに俺はやってやろうじゃないかと
意味の無い対抗意識を少し持ったが、かみさんにもう帰りましょうと
たしなめられた。

それでも一通り動物見せたので、俺の中では満足した。
そうなんだ。これは自己満足でしかないんだ。

そして子供に見せたと思っていた動物達は
皆、オリの中にいてつまらなさそうにしていた。

今度はケニアとかに連れて行って、水平線じゃなくてフラミンゴ平線とかでも
見せなきゃ本物を見せたことになっていないんじゃないかと
新しい自分ルールをこっそり作り、いつか子供とそんな場所へ行きたいと思った。

その後、雨の高速に入り、かみさんと交代でひたすら車を走らせた。
7時間位で青森に到着するだろう。

夜中の車内で、青森帰っているんだよ。と子供に言ったら
「今日はカイリのお家で寝れるの?」と聞いてきた。
「そうだよ」
「やったー!」と喜んでいた。

俺は象やライオンやキリンとか見た感動を
子供の口から言わせたくて

一番面白かった動物は何だった?と話した。

夜、トンネル内オレンジ色の明滅
はるか遠い目的地。
カセットデッキからは懐かしきシェイディードールズが流れていた。

子供は少し考えながら、思い出した!って感じで答えた。
「うんとねえ、カメ!」

俺は、いつかたどり着くはずであろうフラミンゴ平線に向かい、

長いトンネルが終わるまでアクセルを踏む。


散文(批評随筆小説等) フラミンゴ平線 Copyright 瓜田タカヤ 2005-01-06 01:58:46
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