不定型な夏
……とある蛙

私は融ける
部屋の中で
残暑の厳しい光を避けて

私は融ける
一間の部屋で
秋まだ来ない熱風を避け

私は融ける
部屋の布団で
隣に寝ている妻に背を向け

私は融ける
八月の午後
朝まだ来ない彼我誰時

私は融ける
眼を開けないまま
眼球を刳り貫く勇気もなく

私は融ける
両耳を塞いで
溶けた鉛を注がれぬように


私は溶ける
舌を噛んだまま
嘘でしたが引き抜かれぬように


融けた私はそのまま流れ
この夏を越えても
流体のまま
この夏越えても
形のないまま
この夏越えても
融けたまま


自由詩 不定型な夏 Copyright ……とある蛙 2013-08-28 17:16:11
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