おもいもかけない
凍湖(とおこ)

枕元に かばんに 机のひきだしに
いつもゆびさきでふれていた表紙
折りぐせのついたページ
だいすきな文のかたまり
好きなので ひゃっかい読みました
ひゃっかい読んで 覚えました

かんぺきに 覚えて しまって
それはもう ふるくなった わたしなので
浜辺で荼毘に付しました
濃紺のうみをバックに
あおみどりの炎が吹きあがり
わたしの動脈に刻まれた文字列が
があ と吼えました

*

こんなふうに
こいびとを愛して
わたし血肉にしてしまいたい
たべちゃいたい
なあんて

あなたがわたしになってはしょうがない

手をつなぎたいし
キスもしたいし
どきどきしたいし

こいびとは
意外性でもって ときどき
心臓をとびあがらせてくれる
憎らしいやつじゃなきゃ やっぱりだめです

あなたの血はあなたの血
わたしの血はわたしの血
だから おもいもかけない 愛しさがあるので


自由詩 おもいもかけない Copyright 凍湖(とおこ) 2013-08-27 09:25:01
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