北国の彼女
ヒヤシンス


そう、彼女は遥か遠い北国からやって来た。ボブ・ディランの名曲にのせて。
彼女の国では今でも夏に雪が降ると言っていた。
僕はその言葉を本気で信じていたんだ。
彼女が嘘をつくなんて夢にも思わなかった。

あなたは世界で一番騙しやすいわねって彼女に言われたよ。
それでも僕は平静を装って呑気なふりをして煙草なんかを吹かして笑っていた。
彼女に僕の心なんて見えてはいなかった。
僕は世界で一番好きだった人から軽蔑という言葉を教わったんだ。

けれどそれでも遥か彼方の北国に行ってみたいな。
出来れば雪の降る夏に行ってみたい。
だって彼女が嘘なんて言うはずがないもの。

遥か彼方の北国に行ってみたい。
そして言うのさ、夏に降る雪を見に来ましたってね。
だって去って行った彼女の寂しげな面影がこの胸に深く刻まれているんだもの。


自由詩 北国の彼女 Copyright ヒヤシンス 2013-08-26 02:08:52
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