ささやかな想い
ヒヤシンス


遠足だろうか。
赤白帽を被った小さな子供たちが公園ではしゃいでいる。
日曜日の山下公園は多くの人達で賑わっている。
一つだけ空いていたベンチに腰掛けて私は一人それを見ている。

私はどんな子供だったろうか。
あの子らのように純真無垢な心を持っていたであろう幼児期。
家の鍵を手放さず、根暗から根明に変わった少年期。
喜び、悲しみ、恋愛、失恋、経験に富んだ青年期。
親元から旅立ったあの日。

それから何十年たったろう。
何一つ親孝行も出来ず、結婚、離婚、再婚を経験し、孫の顔もろくに見せてやることも叶わず、病にかかり、逆に心配ばかりかけて。
記念写真で整列する子供たちを見つめる親不孝者がここにいる。

おどけた子供たちの赤白帽が横浜の風景に溶け込んだ時、
私にはそれが饅頭に見えてきた。
小さな紅白饅頭。可愛いな。可愛いぞ、紅白饅頭たち。

そうか、今年は一つ親孝行をしてみよう。
たしか今年は両親の節目の年。ささやかな金婚式を捧げたい。
五十年という月日を祝って私は紅白饅頭を両親の墓前に捧げよう。
深い愛情と感謝の念を込めて。


自由詩 ささやかな想い Copyright ヒヤシンス 2013-08-24 17:05:16
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