鏡像段階
はなもとあお

【鏡像段階】


生後6ヶ月から18ヶ月の時期に
生きる
鏡に映った自己とまとまりを欠いた身体感覚の
緊張関係を
わたしは生きただろうか


鏡に映る外側のわたしと
ひとつとぜんぶのわからない内側のわたしを
比べたりしたのだろうか
あるいは
愛でられるだけのちいさなころわたしはひとつだったかもしれない


言葉は鏡に映らない
映らないわたしをわたしはどう認識してきたかといえば
それは表現としてあらわされた言葉での自己で
発達段階を
おおきく遅れて、ひとつ、ひとつ、手に取るように確認していった


自己が認識する自分と他者が認める自分
その差に
苦しみ続ける
人は、自分をとりまく人に一定の姿を決められる
わたしは、いつ、だれといるとき、わたしになるの?


わたし、と呼ばれる
いくつかの役割の顔を
鏡に映しても
みんな同じ顔をしているけれど
それは、内側で、全然違う


あなたといるとき
すべてのわたしが
ひとつになれればよい
それがひとつの
愛の基準


たとえば、ひとつの側面だけなら
家族には、なれなくても
友人や職場の仲間やただ挨拶をするひと
そんなすれちがうけどつながりのある
関係をもつのかもしれない


理想と現実との姿の違いに
叩き割りたくなる鏡のイメージ
何を、どう、すりあわせていけば
あなたとわたしの価値感を共有できるか
……みたいな、視線の他者性のはざまで


眼は
自分のものでありながら
こころにも眼をもたなければならない
理想に近づくために


目の前にある、鏡のなかの、一個のわたし
外側はひとつ
内側はたくさん
それでも
ひとりの人間





自由詩 鏡像段階 Copyright はなもとあお 2013-08-24 13:31:04
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