るるりら

御爺ちゃんは お魚を食べるとき それはそれは丁寧に 
その骨をならべて
なぜか 零戦の話をしてくれた 
骨のアーチを並べながら、「綺麗だ」「綺麗だ」と
繰り返えしながら 並べられる銀色

おかげで わたしまで お魚を食べるのが上手になった
船造りに生きた お爺ちゃんが 骨になった日
葬儀場に 若かりし頃の写真があって
白馬に跨り 腰にはサーベルがあった

お婆ちゃんに結婚の申し込みに行った日も
白馬だったんだってね  
そういうの白馬の王子様って揶揄されるんだよ。
婆ちゃんは生前、お爺ちゃんのことを
「どこの馬の骨か わからんば人たい」と言っていた


お爺ちゃんは むかし戦艦の設計に携わった
飛行機は、お爺ちゃんにとって畑違いのはずだけれども
設計者としての目を きらきらさせて
魚の骨は飛行機の骨と似ているのだと 言っていたんだ 


時代の潮流に呑まれた 多くの命
どこに骨があるのかすら わからんごとなった多くの人々
その喪失感 その家族 その歴史 その生きざま
その軌跡 それはとても口述できないものだろう

それでも わたしには
爺ちゃんの 魚の骨を見つめる目は

うつくしかった  



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映画【風たちぬ】を観てきました。
映画の中で、主人公は 鯖の骨の美しさに きづき、
他国の優れた飛行機技術にも鯖の骨と同じ 
美しさがあることにも感心していました。
この映画で わたしは、祖父技術者としての目、
魚の骨を観る真摯な視線を思いだしました。
映画とまるで 同じだったからです。

ゼロ戦の機体の模型を 先日 あらためて観てみたところ、
私の目には 、「翠」(みどり)という字に似て思えたので
題名と いたしました。


自由詩Copyright るるりら 2013-08-22 11:32:45
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