夜中の生き物
春日線香

ひじきを煮付けていて
鍋の中はまっくらやみの夜
手を差し入れればぐいとつかむものがあり
イヤダイヤダと言っているうちに
連れて行かれた海の底で
おまえはうみうしになる
立派なうみうしになれてよかったと
家族は喜んでいるけれど
わたしはごまかされない
きっと金持ちの慰みものにされ
死ぬまでひじきを食わされることになるのだ
腹一杯につめこまれ
泣いても喚いても食わされて
体の内側からまっくらやみにされてしまう
そのようにしてじわりじわりと
黒いあぶくを吐くだけの存在になる
風呂釜の底でわずかに身じろぎする
どこの誰の生にも余計な
夜中の生き物になるだろう


自由詩 夜中の生き物 Copyright 春日線香 2013-08-21 20:59:29
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