真昼の気晴らし
ヒヤシンス


それぞれの屋根は真昼の太陽に辟易し白々と病んでいる。
こんな日は思い切って外に出てアカシヤの路でも歩いてみたい。
しかし結局我が倦怠がある魅力を持って私に寄り添い、テラスに出て庭の草花を
見ているのが落ちである。母の愛情にも似た庇の下で。

テラスに腰掛けて地球の自転を眺める感覚はこの世の征服者の感覚に似ている。
征服者に憧れない私はこんな感覚を覚えてしまった自分に嫌気がさす。
否定的な感覚は私の神経をすり減らし、小さな破壊衝動に襲われる。
暑さで参っている頭は、この衝動を感情の内に消し去る術を持たない。

私は熟したレモンを半分に切り、その半分を片手で握りつぶす。
指の間から滴る果肉と果汁がガラスのボウルに垂れてゆく。
ツンとした柑橘類の香りが辺りに漂う。

これは良い。私はまったく新しい気晴らし方法を見つけた事に歓喜する。
小さな衝動をこの胸から放つように、レモンのもう半分も握りつぶす。
清々しい香りに満ちたテラスで今日はレモンティーでも飲もうか。


自由詩 真昼の気晴らし Copyright ヒヤシンス 2013-08-21 12:56:14
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