陽炎の道に立ちて。
ヒヤシンス


立ち上る陽炎の道には郷愁を誘うものがある。
ある者はそれに故郷を想い、ある者は自己の魂の遍歴を見る。
忌まわしい出来事は時の彼方に去ったのだ。
ただ眼前に横たわる幻想に今ここに在る為の心の拠り所を模索する。

白い太陽光線に想うのは、確たる現実の装飾。
無駄に付属する一切を燃やし尽くしてしまえよ、太陽。
装飾など見栄えは良いが、その本質をぼやかしてしまうだけだ。
人の世が幸せであればあるほど人は幾重にも装飾を纏いたがる。

今こそ自身に問うてみるがよい。
己の半身は現実の本質を見極められているのか、と。
装飾を削ぎ落とされた時、自身はその現実と対峙できるのか、と。

ああ、現実は恐ろしい。現実ほど己の魂に肉迫してくるものはない。
幻想の中に心の拠り所など無い。それは現実の中にこそ。
自己を否定し矛盾の中に生きるより探求の道を私は選ぼう。


自由詩 陽炎の道に立ちて。 Copyright ヒヤシンス 2013-08-21 04:50:31
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