産声
もっぷ

黄金色に揺れる風景の、向こう側を知らない
あの子は
ちいさな家の出入り口の前から黄金のその揺らぎまでを
世界と認めて
何の屈託もなかった
愛らしさは笑顔からよりも俯きから顕れ
時に純水のなみだに見受けられ
誰の気を惹かずとも
その子どもの、その少女だけの神のこころを
魅了してやまなかった
恵みはそれだけ
ひとつの神の御こころのみが
彼女を見守るすべてだった

やがて、

老いた

もはや少女ではないその
老婆は悟る
  ここは、胎児としての夢の中なのだ
ということを

老いてしまったのではなく
出口へ入り口へ限りなく近い距離を得た少女は
日々を朗らかに徴しながら遺すものなく
ただひたすらに待っている

その、日を。

  (まるでいまのわたしのように…

やがて新しい産声!
黄金色の風景の向こう側で!



自由詩 産声 Copyright もっぷ 2013-08-21 00:43:26
notebook Home 戻る