ポスト (想起させるものに、忠実に)
乾 加津也

あなたの立てたポストは脆く
内も外も、やまない雨に濡れそぼつ
底冷えに、這いつくばった無音の小部屋の
差込口は狭く
取出口は固く
錆びた金具
動かない


 こころの番地(アドレス)は、もう消えて
 しなやかな睫毛で振りはらう
 春風と、木洩れ日
 夏の、蝉


     ― あなたはシェード、景色すら厭わしい ―


自転車をおりる
わたしはそれでも
この葉書を、落とそう


自由詩 ポスト (想起させるものに、忠実に) Copyright 乾 加津也 2013-08-17 21:05:24
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