真夏の影
キダタカシ

高く登った太陽が
より濃く写す真夏の影
それは微睡む、眩む昼下がり

汗ばんだ首をそっと撫でる風
窓際の儚く揺れる竹簾
それは蝉時雨の白昼夢


向かいの酒屋で風鈴鳴れば
土佐錦、ふわりふわりと宙を舞う

遠くの神社で龍笛鳴れば
艶やかな狐の嫁が立ち止まる


美しく歪んだ意識は空に溶け
神秘に佇む不安の陽炎

唯一の頼りは引き出しの中にある
君がくれた手紙と御守り


うちわ越しの雲の峰

七日目の命の灯火

甘い泡沫の氷菓子


銀色の後悔と
硝子の希望

”此れで良い“と呟いて


高く登った太陽が
より濃く写す僕の影

それは微睡む、眩む昼下がり
それは蝉時雨の白昼夢


自由詩 真夏の影 Copyright キダタカシ 2013-08-17 15:17:19
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