君ら爆弾、かなり飛んでる
ざらざらざら子
この街全体を見下ろすにはあの廃ビルをのぼればいいんだけど、のぼっても見えるのは廃ビルそして廃ビル、だってこの街はちょいと昔からビルの墓場だから、人々はこの街を離れて新興住宅地の一角、小さな庭付きの家で紅茶にレモンの輪切りとかりんごをすりおろしたのを浮かべてズーズー啜ってるわけだ、そんなことどうでもいいんだけど、ケッコウどうでもいいんだけど、このビルの墓場にはだれも花を手向けにこないから、朽ちる速度は秒速なんてもんじゃなくなってる、鉄筋むきだしのビル、あのバカでかいビルには奥さんと子供と別れたおじさんが暮らしてる、そっちのビルには子供社会ができあがってるって噂、それからこのビルにはこの街を爆破させようと目論んでるわたしと君とその他大勢の暇人たちが暮らしてる、コンクリートとコンクリートの割れ目から緑そして花、むしりとって明日を待つ、救世主を待つのは、くたびれちゃったし
ねずみの骨を鳴らして、野良犬ども/野良猫の鼻にのせたタンポポ/結局うたいたいのは子守歌/でもわたしら眠らない/かじかんだ終末をスノードームにぶちこんで/さよならっていえたら
最高にかっこいいんだけど
わん、つー、すりーで、もうすぐ爆発する街を、わたしも君も、夕暮れにビタビタに浸って見てた、けっきょく救世主はこなかったねとコウタ(本名じゃない)が言う、隣のビルの落書き気に入ってたんだけどとリンコちゃん(たぶん本名)がつぶやく、秒針がいちいち耳をつらぬいて、バリバリと蝕まれてく半世紀よりも幼い皮膚の表面、わん、つー、すりー、もろくすっぽ聞こえないでビルの墓場は、わたしらの街は、爆発した、そしてわたしらも粉々になって、遠くの新興住宅地に舞った、比喩でもなんでもなくまじで舞ったわけだけど、ほんとうは何がしたかったんだか、今でもわからない、わたしたちは救世主を待って、ただひたすら待って、救世主の意味さえよくわからなくて、潰して遊んだ蟻の数に笑うしかなかった、
退屈を爆発させて胃袋を満たしたかったとでも言えば今っぽい
そんなことして何になるの君たち、そう言って、鼻で笑って、若気のいたりの一言で片付けてくれてもいいよ、わたしらのこと