宙ぶらりん
和田カマリ

久しぶりのデート
彼はつまらなそうに
パスタを食べていた
音を立てながら口に吸い込むの
やめて欲しいな
おまけにウエイトレスさんに
味が薄すぎるってダメ出し
よく言うよ
上から目線で何を威張っているの
同じ人間と思われたくない
やめて欲しいな
食事の途中だってのに
スマホを触る手が止まらない
ああ
やめて欲しいな
もう無理かもしれない

あの

「俺達別れたほうがいいんじゃね。」

あんたが先に言うの?
「一緒にいる意味が見あたらネエ。」
時間の無駄ってか
「じゃ。」
立ち上がるとプイッと
彼は出て行ってしまった

あの

結果的に
これで良かったんだけどさあ
あたしに言わせて欲しかったな

その後そのお店の中では
他のお客さんたちの交わす
蜘蛛の巣みたいな視線の中で
あたしの台詞が
宙ぶらりんになっていた


自由詩 宙ぶらりん Copyright 和田カマリ 2013-08-07 18:27:54
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