天国へハイウェイ
ホロウ・シカエルボク



無が堆積する日常の中で屍蝋化した純朴が
何を見ることもないまなこただ見開いて
呻くような旋律が微かに漂う空間の中を
まだらになって静止している
まだらになって静止している
腐り果てたのは
あまりにも熱い血流と
竜巻のような叫びだろう
望んだ静けさは
凝固した肢体ではなかっただろう
火種の無い日々の中では亡霊にもなれず
書き終えなかった詩文のようにそこに留まっているのみだ
留まって
忘れられているのみだ
カセットテープの無録音部分のような
抑揚の無いさざ波の音
朦朧の時を支配している
利口に研いだ爪じゃなければ
掻き傷ぐらいは残せたかもしれないな、ええ?
育ちの悪い真似はお好みじゃなかったんだろう…
そして打撲痕のように呪いだけが疼き続けるんだ
嗤い声は何だ、どこから聞こえてくるんだ
何処か遠い場所で、さらに隠れて
何処か遠い場所でさらに隠れてくぐもっているあの声は
誰のことを嗤っているんだ、判断出来るかね
もしかすると蝉の姿かもしれないが
そうだ、あいつらは嗤えるのだ
ただただ懸命に鳴くのみだから
所詮
懸命に鳴くのみだから
けたたましい夏の加圧が
夕立の黒雲を押しどける夕刻の始まり
遮光繊維の向こうで爆撃の閃光のようなものが瞬き続けている
焼き尽くされるのは、きっと
その光から逃げようとするものばかりだ
ハロー、ハロー
焼け焦げてお加減は如何ですか
みんながうつ伏せている
きっと逃げようとしたせいさ
夏だ
夏だ
夏だよ
夏だ
灼熱の中で誰もが破裂している
その形状
臭い
どうしようもない
絶えず繰り広げられるノイズの集合は
死に等しい静寂となんら違いはない
発光したままのディスプレイの中で誰かが歌っている
所要時間をカウントされながら
澄んだ明るい声だけど体温は無かった
澄んだ明るい声だけど体温は無かったんだ
あれはきっとこの世で一番涼やかな死体なのだろう
そんなものの脚に舌を這わせながら
思春期のように射精するまぼろしを見ていた
ドライブしてゆく感情
ハイウェイルートに乗って
最も天国に近い防護壁を探している
天国へハイウェイ
天国へぶっ飛ばそう
哂い声の
主に
いまやっと







気付いた



自由詩 天国へハイウェイ Copyright ホロウ・シカエルボク 2013-08-04 16:39:27
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