目玉焼きの皿がからになったらキスをする
石田とわ
ゆっくりと目覚めた休日の朝
起きるとテーブルにはもう目玉焼きができていた
おはようを交わしたまではよかったのだ
目玉焼きののっていた皿がからになると
きみはさっさと片付けて
がちゃがちゃ音を立てて洗いだす
まだ半分寝ぼけたあたまで考える
起きてからいったい何をやらかしたのか
いやいや、何をやらかさなかったのか
夕べ何事か朝の約束をしたのだろうか
酔った勢いで朝一番にキスをしようとか
いかにもきみの言いだしそうなことだ
またぼくもつい調子にのっていいそうだ
皿を洗う口がへの字に曲がってるし
親の敵のようにごしごし皿を洗うきみをとめるには
どうしたものだろう
コーヒー片手に新聞を読むふりをしながら
そんなきみを盗み見する
きっとそのうちきみは怒りながら泣きだすだろう
そして休日の午後はそんなきみをなだめて終わる
まぁしかたがないか
これがぼくの幸せの在り方なのだから
やっぱり休日はおはようのキスからはじめよう