終わらない夏
ただのみきや



罌粟は魔性を見開いた
空の喀血の真中から
影だけが祈る 青く
静かな蜥蜴のように

 ミツメルカワタシヲ

陽炎を纏った男がひとり
抱えた鞄は石ころだらけ
左手で心臓を握り潰す午後
蜩のような声で爪を立てる

 ホッスルカワタシヲ

蝶が墜ちる
記憶の中の栞のように
時が 愛憎の全てを一つの
消失点に集約してしまう前に

真紅の罌粟と男は
繰り返される夏の日の
句読点を探しあぐねて
散財して行く

 ホゾノサカズキナデ
 ナイフデキズツケテ
 チヲカキアツメチヲ
 


自由詩 終わらない夏 Copyright ただのみきや 2013-07-30 23:15:52
notebook Home 戻る