跡地
……とある蛙
高層ビルの一角に再現された空中庭園
そこに残ったのはサクラの樹一本
話が違う。
そこの地べたにはかつて公園があった。
今日(いま)
ベンチに腰掛ける老人はもういない。
ラジオ体操をする人もそこにはいない
何本もあった桜の樹は一本だけ残った。
再開発
近代的な高層ビルの根元に
いかにもという形で植栽された木々
いかにもという形の階段やベンチ
洒落て近代的なデザイナーによる
人間工学に基づいたベンチや公園の設計
みんな素通り
みんな足早に通り抜ける
集うのは遠方から来た若夫婦や
近所のサラリーマン
ブックエンドでもなく
中途半端なテーマパーク風
猫が一匹
風の匂いを嗅ぐため首を擡げる
鼻先には何やら
蝶が一頭
猫をからかうように舞っている
猫はアクビをして
また、どこぞに消えていった。
それから猫も蝶も見ることはなくなった
もう蒸し暑い夏だ。