跡地
……とある蛙

高層ビルの一角に再現された空中庭園
そこに残ったのはサクラの樹一本
話が違う。
そこの地べたにはかつて公園があった。

今日(いま)
ベンチに腰掛ける老人はもういない。
ラジオ体操をする人もそこにはいない
何本もあった桜の樹は一本だけ残った。

再開発
近代的な高層ビルの根元に
いかにもという形で植栽された木々
いかにもという形の階段やベンチ
洒落て近代的なデザイナーによる
人間工学に基づいたベンチや公園の設計

みんな素通り
みんな足早に通り抜ける

集うのは遠方から来た若夫婦や
近所のサラリーマン
ブックエンドでもなく
中途半端なテーマパーク風

猫が一匹
風の匂いを嗅ぐため首を擡げる
鼻先には何やら
蝶が一頭
猫をからかうように舞っている

猫はアクビをして
また、どこぞに消えていった。
それから猫も蝶も見ることはなくなった

もう蒸し暑い夏だ。


自由詩 跡地 Copyright ……とある蛙 2013-07-30 15:28:35
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