詩作
ヒヤシンス


明け方にふと目を覚まし手を伸ばす者は何かを掴むだろう。
ささやかな朝食の後、テラスに出て森の香りを浴びる者は何かを得るだろう。
アンニュイな午後、そよぐ風にその身を晒す者は何かを感じるだろう。
全ては私のそれとは気付かないうちに。

振り子時計が時を刻む音はとても厳格で私の心を律する。
夕暮れ時、家々の台所から漂ってくる夕餉の匂いは私を郷愁に誘う。
夜の入り口に立ち止まった私は今はもう恐れることをしない。
特に今日という日に何かを得ることが出来たのなら尚更だ。

夜の褥に横たわる私は全てに満ち足りている。
たとえ闇夜の魔人が私のドアを無理にこじ開けようとしても動じることはない。
私はただ穏やかな心を持ってそのドアを開けるだろう。

夜を迎えた私にもう恐れるものは無い。
夜は全てを包括するが、いまや私が夜を統括したのだ。
私は全ての叫喚を歓喜に変える術を得たのだ。


自由詩 詩作 Copyright ヒヤシンス 2013-07-29 20:00:34
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