夜と静物
アラガイs


冷房の効いた部屋では落ち着いて眠れない夏
棚に置いた幾つかの花瓶には底のある大きな口が空いていて
這い出そうと暗い肌触りの途中で待ち構えている
ずる賢くて冷たい虫たちの気配を感じる触手
使われない置物は遠い場所へ整理しよう
骨身を削る心配がなくなるように
軽く身動きがとれる
【夜】になればいつもそう考えている 。

軒先の紫陽花を毟取った母親を怒鳴りつけた。
去年植えた薄紅色紫陽の花
気がつけば仏壇に小さく飾られていた
表四隅には千切れかかる蜘蛛の居ない糸
しばらくして菊の束と交換したよ
母屋の棚の中には見覚えもなくにぎやかな
、使われない物だらけが闇の口を塞ぐ
白磁の肌触りのようなから箱
捨てようとした、そんな決断は
、また朝が来れば忘れてしまうから 。











自由詩 夜と静物 Copyright アラガイs 2013-07-28 17:13:20
notebook Home 戻る