しょうけらのいる窓
佐々宝砂
その古い家には
ちいさなあかりとりの天窓があって
夜ふとんに入ると
その窓がいやに気にかかってたまらなくて
ぎゅっと目をつぶった
星も見えないようなちいさな天窓
月明かりだけはぼんやり射しこむ天窓
古ぼけたガラスは古ぼけた木の桟に囲まれて
射しこむ光はゆがんで
あのゆがんだ光の向こう側には
きっとしょうけらがいて
こっちをそうっとうかがっているのだ
脳裏に思い浮かべるしょうけらは
水木しげるの絵の通りで
つまりは
鳥山石燕の絵にそっくりだったのだけど
そのころわたしは鳥山石燕なんかしらなかった
それから何年も何年も経ってしまって
それでも夜半にふと目覚めて天井を見つめれば
今はもうない家の
今はもうない天窓から
今もやっぱり
しょうけらがそうっとこっちをうかがっている