本当はおろしハンバーグを食べていたい
19891026

エタノールがちゃぽちゃぽと揺れてる
それは頭の中のできごと

ねばりけのある暗闇の中で想起するのはエーテル
エタノールとエーテルはにてるにてるてるてるてる
正確には"エ"のところと"ー"のところと"ル"のところが

石の名前を眺めるとき浮かび上がらないフォルム
曖昧な図鑑の挿絵
ラピスラズリスピネルアイオライトトルマリンクオーツタイガーアイ
極々メジャーな石ころ達のうちがわにはエタノールがつまっていて
キラキラとまぶしい ぽちゃぽちゃぽちゃ

零れちゃう
萎んじゃう
乾涸びちゃう

丸く開いた脣がつねに日陰よりも濃い暗がりを飼っているから枇杷の木の枝に凭れ掛かって指の爪を全部噛んだ
犬歯の先っぽで空いた穴から言葉が溢れ出したけれどその時の言葉はエーテルじゃなかったその時のことばがエーテルだったらよかったのにのにのにのに

エーテルを生めない
タイムカプセルを埋めた
エタノールをつめて
別れ際にさよならを言わない
おやすみを言う
その代わり
眠るときには

枇杷の木の葉の間から重たそうな夕陽が零れていて最近では時計がよめなくなっちゃってて見知らぬシワシワのおばあちゃんのこともすきじゃなくなっちゃっててそれはつまりここが楽園ってことじゃないかしらと考えてみるけれどファミレスの白っぽくて黄色っぽくてしょうがない蛍光灯の真下でほんとうはおろしハンバーグをたべていたいあーあ南の島とか行っちゃいたいなって言いながらおろしハンバーグをたべていたい


自由詩 本当はおろしハンバーグを食べていたい Copyright 19891026 2013-07-27 17:20:25
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