いつつ ながれ
木立 悟






傾いた径を
傾いた柱がなぞり
森を巡り
坂を下る


傍らをすぎる見えないかたちの
わずかな動きにひかるもの
夜の端
夜の痛みを照らすもの


枝から枝へ雨が降り
波紋が流れつづけている
内の見えない硝子窓
渦のように川辺に並ぶ


小さな風のほころびが
庭を横切り消えてゆく
空をあおぐ草浪に
見ること以外の雨が降る


五つの径の
夜に近いほう
星が少なく
誰も居ないほう


捨てられた匙が示す空
灰の原
緑の房
昇る昇る 金を花を踏み


貼り忘れた空の隙間
真昼の青 無人の街
曇が隠しきれないものを
月は静かに消してゆく


雨を追い 坂を下り
夜になり まだ雨を追い
点いたり消えたりする森の
五つの傾きを流れてゆく
























自由詩 いつつ ながれ Copyright 木立 悟 2013-07-26 22:18:19
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