伏流水
佐東

嘗て
王国があったとか
そんな話を
あなたの中耳に
棲みついている
遠浅の潮音が
夜毎
瞼の上の白い渚に
刻みつけようとするのだけれど
水分を含んで
重たくなった夏服を
わたし
いまだ脱げないでいる

(水かさは増すばかり。)

皮膚のかわりに
水色の
うすい膜が
身体の表面を覆っている
寝返りをうつたびに
喫水線を越える
夢水

(水の中へ手を伸ばす。)

指さき
から
指さき

手わたされる
ように

あなたの伏流水が
わたしの中へ

(あおい夢をみている。)

水を抱く
そうして
水の名まえを
失くしてしまう












自由詩 伏流水 Copyright 佐東 2013-07-26 00:01:58
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