amaoto
山人


ガードレールに捲きついた
細い蔓植物が雨にたたかれ揺れている
雨はそれほど強く降っていた
たぶん汗なのだろう、額から頬にかけて液体が流れ落ちている
さらに背中は液体で飽和され
まるで別の濡れた皮膚を纏っているかのようだ
雨は降るべくして降っている
草は、乾ききった葉の産毛をゆらめかせ、雨を乞い
重い空はすでに欲情していた
二つ三つ水が落下し、やがてばらばらとちりばめられ
草は今、雨に弄られ、四肢を震わせている
 私は無機質に草を刈る
たった今まで草たちは悦びに満ち溢れていた、その草を刈る
草は断面を切断され、ひときわ臭い液体をこぼし
雨にくったりとその残片をアスファルトにさらしている
私たちは雨の中、いや、土砂降りの中
まるで水中を漂う藻のようにふわふわと何かに押され、引かれ
脳内のどこか片隅から放たれる小声に従い、動いていた
 雨、その水滴に溶け込んだ念仏
水滴が引力に引かれ落下し
アスファルトという固形物に撃ち当たり
球体が破壊される炸裂音
その音が、ひとしきり私たちの外耳に吸い込まれていく
脳内の広大な農場に張出した棘の先端を
おだやかに覆うように流れていく
私たちは皆、ひとりひとりが孤独な生き物となり
降りしきる雨の中を
新しい戦いのプロローグの中を
ゆったりと活動していた






自由詩 amaoto Copyright 山人 2013-07-25 07:24:35
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