A
はるな


わたしをAと見たて踊らせるのは
おそろしいことにちがいなかったが
おかげで血はとまった

うすばかげろう、
知らない言葉を育てることで
知らない自分を見捨てることができた
(辞書はよごしてはいけない)
人びとが知恵をつけ
柵を進化させてゆくあいだも
わたしは器用にその内がわをなぞり
つめたさをあつめて回っていた
わたしを、
Aと見たて踊らせるのは
たしかにおそろしいことだったが
あなたを、わたしに見たてて踊るよりは
あるいはその柵の外がわを、歩くことよりは
やさしいことでした
だれにとっても

うすばかげろう、
チトニア、にちにち草、あさがお、向日葵
夏は冬を越せない
物ごとの途中で
ちからつきるように死んでしまう
Aはそんな花ばかりを
このんで柵のうち側には咲かせていました



自由詩 A Copyright はるな 2013-07-24 23:41:41
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