夏の影/素描
佐東

上塗りされた夏空の
組まれた手の
ゆびの
一本一本が
解かれてゆくように
光が
そこかしこに
ばらまかれ
熱を分けあう潮騒が
とおく
攪拌されてゆく



カンナの花が
無言で咲いていた
海行きの路線の傍らで
汗ばんだ声の
蝉が
やかましい
たいせつな
いのちの名まえを
呼びあっている



きみは
カンナの手をひいて
真昼の星を
数えてる
二つならんだ
影法師

切り落とされた夏を
素描してゆく
白い午後



赤い
花びら越しに
ゆらめいている
たおやかな風の背に
見送られるようにして
透けてゆく
夏の祈り

黒い
蟻の一列が
順々に
運んでゆく
沸き立つ雲の中へ









自由詩 夏の影/素描 Copyright 佐東 2013-07-21 23:28:44
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