境界線
まーつん

 僕は一人では立てない
 見えない杖があり
 支えられている

 絆は 時に
 ロープとなって
 絶望の海から
 僕を 引き揚げ

 時に 鎖となって
 生贄の十字架に
 僕を 縛り上げる

 別に
 楽しいところじゃない
 この世界は

 正しくもないし
 かといって
 間違いだらけでもないし
 なんだか
 あやふやなところなんだ

 この世界は

 生きていくということを
 改めて見直してみると
 まるで むずかしい
 カードゲームに
 興じてるみたいだ

 けっして完全には
 ルールが呑み込めない

 だけど
 理性ではなく
 感情で動いている限り
 規則なんて何の意味もない

 そして
 感情をなくしたら
 人間とは呼べない

 だからいいんだ
 出鱈目なままで

 蜃気楼のように
 浮かんでは消える
 境界線

 人は己を守ろうと
 それを引いたり
 消したりしている

 何度描いても
 気に入らないのは
 線が人を孤独にするから

 そのうちに
 チョークは磨滅して
 芥子粒ほどに縮まってしまう

 それが
 命の終わり

 本当は
 一つになりたいんだ
 線の向こうへと踏み越えて

 相手を受け入れ
 己を溶かし去って
 二人は 新たな一人となる

 
 僕が あなたを愛せるのは
 死を 受け入れるとき

 僕が あなたを愛せるのは
 僕が 僕でなくなるとき


 自己を(守るものを)
 手放したとき

 僕は
 あなたを
 愛せるほどに



 自由になれる







自由詩 境界線 Copyright まーつん 2013-07-21 18:09:34
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